岡林信康アルバム第二集 見るまえに跳べ

岡林信康アルバム第二集 見るまえに跳べ
岡林信康スタジオ・アルバム
リリース
録音 1970年3月 (1970-03) - 4月
ジャンル フォーク
レーベル URCレコード
プロデュース 秦政明
チャート最高順位
  • 週間35位オリコン
  • 登場24回(オリコン)
  • 売上3.3万枚(オリコン)[1]
ゴールドディスク
ニューミュージックマガジン誌・第二回日本のロック賞金賞(4位)
岡林信康 アルバム 年表
  • 岡林信康アルバム第二集 見るまえに跳べ
  • (1970年 (1970)
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岡林信康アルバム第二集 見るまえに跳べ』(おかばやしのぶやすアルバムだいにしゅう みるまえにとべ)は、岡林信康1970年6月1日URCレコードより発売したスタジオ・アルバム

解説

”反戦フォークの歌手”というあらぬ存在に祭り挙げられてしまったことに嫌気が差し、人気絶頂の1969年9月 (1969-09)に突如蒸発した岡林は、友人宅でボブ・ディランのアルバム『ライク・ア・ローリング・ストーン』を聴き込んでロックに目覚める。当時、ボブ・ディランはザ・バンドをバックに従えており、友人の小倉エージより、「はっぴいえんど(当時、ヴァレンタイン・ブルーと名乗っていた)をバックにして同じようなことをやったら面白いじゃないか」という提案もあり、早川義夫の制作の下に作り上げられた力作[2][3]

タイトルの「見るまえに跳べ」は、大江健三郎が1958年 (1958)に出した短編集のタイトルから来ており[4]、「一生懸命、見て考えていたら行動できない。まず行動することが大切だ」という考えの表現[5]。また、収録曲の「堕天使ロック」の歌詞の一句から、アルバム・タイトルはとってあるとも書いてある[6]

ディレクターとして指名された早川は、1970年2月 (1970-02)中旬、近江八幡の岡林の家に一週間ほど泊まりこみ、ディスカッションしたり、岡林の曲づくりの現場に立ち会ったりした[7]

URCとしては断トツのセールスを記録する[7]

ロックをレコーディングするという作業は難航して、技術者もよくわからず、洋楽をよく聴いて色々知っているはっぴいえんどの細野、大滝、松本に聞いたり、ドラムに毛布を被せて渋い音にしたりの試行錯誤だった[8]

ピアノ・オルガンに参加した渡辺勝は、斉藤哲夫が「いいピアノ弾きがいる」との紹介によるもので、ベースの稲葉正三とドラムの小川敏夫は武蔵野タンポポ団にいた若林純夫の紹介によるもの[9]。はっぴいえんどより、この3人による岡林バンドのほうがいいバンドだったと斉藤哲夫は語っている[9]

エピソード

このアルバムを発表した後に、岡林信康はバンドを従え日本縦断のコンサートを行った。北九州市と熊本市で開かれたステージに、デビュー前の海援隊が前座として出演。当時、こういった地方でのステージには、地元のアマチュアバンドが前座として出演するのが定番になっており、大先輩をくってやろうという思い上がりは、福岡のアマチュアグループは皆持っていた。先輩であるプロ歌手が出演する前にアマチュアがステージに立ってはりきった演奏をすると、いざプロ歌手本番の際には半分くらいの客が帰ることもしばしばで、それを前座組は「やったやった」と喜んでいたが、いざ岡林信康がステージに立ってみると、「とても太刀打ちできる相手ではない」と痛感した[10]。「性と文化の革命」「私たちの望むものは」「おまわりさんに捧げる詩」などを歌い、次の「愛する人へ」では、生のステージで初めて感動し、「自由への長い旅」では岡林信康の世界に飲み込まれてしまったという[10]

収録曲

Side A

  1. 愛する人へ  – (5:45)
    • 作詞・作曲:岡林信康
    • 既にシングル化したバージョンと同じ。
  2. おまわりさんに捧げる唄  – (5:13)
    • 作詞・作曲:岡林信康
  3. 性と文化の革命  – (4:24)
    • 作詞・作曲:岡林信康
  4. 自由への長い旅  – (4:05)
    • 作詞・作曲:岡林信康
    • ピアノのイントロから入る語りかけるようなバージョンで、後にシングル化するバージョンでは、激しいバンドサウンドタイプに変わっている。
  5. 私たちの望むものは  – (6:34)
    • 作詞・作曲:岡林信康
    • 既にシングル化したバージョンとは異なり、イントロ無しで始まる。

Side B

  1. NHKに捧げる歌  – (3:21)
  2. 堕天使ロック  – (3:36)
    • 作詞・作曲:つげ春乱
    • ジャックスが歌っていたものをカバー。
    • 歌詞の中の「見る前に跳んでみようじゃないか」という一句から、アルバム・タイトルをとってある[6]
  3. ロールオーバー庫之助  – (4:42)
    • 作詞・作曲:早川義夫
    • ジャックスが歌っていた「ロール・オーヴァーゆらの助」を改名してカバー。
  4. ラブ・ゼネレーション  – (5:25)
    • 作詞・作曲:早川義夫
    • ジャックスが歌っていたものをカバー。既にシングル化したバージョンと同じ。
  5. 無用ノ介  – (3:27)
  6. 今日をこえて  – (4:28)
    • 作詞・作曲:岡林信康
    • アルバム『わたしを断罪せよ 岡林信康フォーク・アルバム第一集』にも収録されているが、前作ではつのだひろがドラムを叩いており、ジャズっぽくて、ロックとしては違和感があった。当時は手探り状態でやってたので、それでよしとしたが、はっぴいえんどと出会ったことで、もう一回ちゃんと録ろうという気持ちになって再録音になった[11]。後に同じバージョンでシングル化する。

レコーディング・メンバー

愛する人へ

おまわりさんに捧げる唄

  • 唄・ギター  – 岡林信康
  • はっぴいえんど

性と文化の革命

  • 唄・ギター  – 岡林信康
  • はっぴいえんど

自由への長い旅

  • 唄・ギター  – 岡林信康
  • ベース  – 細野晴臣、稲葉正三
  • ドラム  – 小川敏夫
  • オルガン・ピアノ  – 渡辺勝

私たちの望むものは

  • 唄・ギター  – 岡林信康
  • ベース  – 細野晴臣、稲葉正三
  • ドラム  – 小川敏夫
  • ピアノ  – 渡辺勝

NHKに捧げる歌

堕天使ロック

  • 唄・ギター  – 岡林信康
  • はっぴいえんど

ロールオーバー庫之助

  • 唄・ギター  – 岡林信康
  • はっぴいえんど

ラブ・ゼネレーション

  • 唄・ギター  – 岡林信康
  • はっぴいえんど

無用ノ介

  • 唄・ギター  – 岡林信康
  • フルート  – 木田高介

今日をこえて

  • 唄・ギター  – 岡林信康
  • はっぴいえんど

スタッフ

  • ディレクター  – 早川義夫
  • プロデュース  – 秦政明

発売履歴

発売日 レーベル 規格 規格品番 備考
1970年6月1日 (1970-06-01) URCレコード LP URG-4001
1976年 (1976)10月25日 URCレコード LP UX-8004 販売元は東宝レコード
1980年 (1980) SMSレコード LP SM22-4102
1992年12月2日 (1992-12-02) 東芝EMI CD TOCT-6872
2008年8月22日 (2008-08-22) ディスクユニオン CD FJ-1002 2008年 (2008)デジタルリマスター盤、紙ジャケット仕様
2013年3月20日 (2013-03-20) ディスクユニオン CD ONL-1002 2008年 (2008)デジタルリマスター盤

関連項目

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ 「オリコンチャートブック〈LP編(昭和45年‐平成1年)〉」ORICON BOOKS、1990年5月1日、101ページ。
  2. ^ 「日本ロック&フォークアルバム大全 1968-1979」音楽之友社、1996年5月1日、152頁
  3. ^ 1970年の本日、岡林信康のセカンド・アルバム『見るまえに跳べ』がリリースされた。今年で45周年ということになる。_大人のMusic Calendar_大人のミュージックカレンダー2020年3月14日閲覧。
  4. ^ 『岡林、信康を語る』disku union、2011年7月13日発行、48-52頁。
  5. ^ アルバム内ライナーノーツより。
  6. ^ a b 『岡林信康のすべて』新譜ジャーナル別冊、自由国民社、1972年3月5日発行、64頁。
  7. ^ a b urcrecords.com2020年3月15日閲覧。
  8. ^ 『岡林、信康を語る』disku union、2011年7月13日発行、47-48頁。
  9. ^ a b D's Talk session #19 with 斉藤哲夫 ”稀代のメロディメーカー、哲夫さん”2020年11月1日閲覧。
  10. ^ a b 『ふられむしの唄』武田鉄矢著、講談社、1975年10月25日発行、110-114頁。
  11. ^ 『岡林、信康を語る』disku union、2011年7月13日発行、46頁。
  12. ^ アルバムのクレジットに準拠。

外部リンク

urcrecords.com
  • 見るまえに跳べ/岡林信康アルバム第2集
その他
  • 1970年の本日、岡林信康のセカンド・アルバム『見るまえに跳べ』がリリースされた。今年で45周年ということになる。
  • 岡林信康がはっぴいえんどをバックにロックへと転向した『見るまえに跳べ』
  • ジャックスから岡林信康に受け継がれていった「ラブ・ジェネレーション」とロック・スピリッツ|TAP the SONG|TAP the POP
  • 聴き比べ 早川と岡林『堕天使ロック』他 - Flying Skynyrdのブログ
シングル
  • 1. ほんじゃまあおじゃまします/山谷ブルース(発売中止)
  • 2. 山谷ブルース/友よ
  • 3. 流れ者/チューリップのアップリケ
  • 4. くそくらえ節/がいこつの唄
  • 5. それで自由になったのかい/手紙
  • 6. 愛する人へ / ラブ・ゼネレーション
  • 7. 私たちの望むものは/性と文化の革命
  • 8. だからここに来た/コペルニクス的転回のすすめ
  • 9. 家は出たけれど/君を待っている
  • 10. もずが枯木で/お父帰れや
  • 11. 自由への長い旅/今日をこえて
  • 12. 手紙/それで自由になったのかい
  • 13. 俺らいちぬけた/申し訳ないが気分がいい
  • 14. 山谷ブルース/流れ者
  • 15. チューリップのアップリケ/私たちの望むものは
  • 16. ゆきどまりのどっちらけ/つばめ
  • 17. 墜ちた鳥のバラード/いくいくお花ちゃん
  • **. 大ダイジェスト版 三億円強奪事件の唄/砂漠
  • 18. 26ばんめの秋/あの娘と遠くまで
  • 19. たれぞこの子に愛の手を/怪人二十面相を追いつめろ
  • 20. 青い月夜の散歩道/うつし絵へのひとり言
  • 21. わかれ雨/橋〜実録仁義なき寄合い
  • 22. からっぽの唄/五年ぶり
  • 23. 淋しき街角/ミッドナイト・トレイン
  • 24. Good-bye My Darling/遠い朝
  • 25. Gの祈り/君に捧げるラブソング
  • 26. ダンスマン/ミス・ベンリー
  • 27. 蒼ざめた朝/インスタント・ラブ
  • 28. ラスト・モーニング/たそがれの20世紀
  • 29. 夕べの祈り/ムーン・ライト
  • 30. 山谷ブルース/チューリップのアップリケ
  • 31. ペンノレ(日本語版)/ペンノレ(韓国国版)/ペンノレ(カラオケ)
  • **. Dance Music/君に捧げる Love Song '90
  • 32. ジェームス・ディーンになれなかったけれど/愛しき君へ
  • 33. 祈りの朝/祈りの朝(ゴスペス・スタイル)/祈りの朝(ソロ)
  • 34. 風詩/乱の舟唄/乱の舟唄(オリジナル・カラオケ)
  • 35. レクイエム〜麦畑のひばり
  • 36. さよならひとつ/遥かなるこの旅を/さくら雨の朝に/さよならひとつ(アコースティック ver)
  • **. 岡林信康withはっぴいえんど 7インチBOX
アルバム
オリジナル
発掘ライブ
  • 1. 私たちの望むものは 音楽舎春場所実況録音
  • 2. 岡林信康ファースト・コンサート〜MOVEMENT(アングラ音楽祭〜岡林信康リサイタル)
  • 3. 岡林信康ライブ 中津川フォーク・ジャンボリー
  • 4. '70 岡林信康ロックコンサート(岡林信康ろっくコンサート)
  • 5. '70 岡林信康ロックコンサートPartII(岡林信康壮行会)
  • 6. 岡林信康ライブ レアトラックス
  • 7. 岡林信康リサイタル 中野サンプラザ・1975
編集盤/新緑ベスト
  • 1. 休みの国/岡林信康リサイタル
  • 2. 岡林信康の世界
  • 3. 岡林信康の世界 第2集
  • 4. 岡林信康オン・ステージ
  • 5. 岡林信康ベストコレクション
  • 6. 大いなる遺産
  • 7. ザ・ワースト・オブ岡林信康
  • 8. 岡林信康
  • 9. 岡林信康ライブ with はっぴいえんど
  • 10. 航跡/岡林信康ベストアルバム
  • 11. 岡林信康Vol.1
  • 12. 岡林信康Vol.2
  • 13. 岡林信康ベストコレクション
  • 14. エンヤトットでDancing!!
  • 15. 岡林信康ベストアルバム
  • 16. 岡林信康ベストコレクション歌祭り
  • 17. 岡林信康ベストコレクション歌祭り2
  • 18. 岡林信康 歌祭り3
  • 19. 御歌囃子参上!! 岡林信康エンヤトットミュージックベストコレクション
  • 20. 岡林信康URCシングル集+8
  • 21. 岡林四十五景〜デビュー45周年記念ベスト盤
  • 22. 森羅十二象
参加作品
  • 1. 第4回フォーク・キャンプコンサート
  • 2. 第2回全日本フォーク・ジャンボリー
  • 3. 自然と音楽の時間
  • 4. 自然と文化の72時間
  • 5. '71全日本フォークジャンボリーライブ第二集
  • 6. ゲームは終わり
  • 7. '69第1回中津川フォーク・ジャンボリー
その他
関連項目
シングル
  • 12月の雨の日/はいからはくち(1971年4月1日 (1971-04-01)
  • 花いちもんめ/夏なんです(1971年12月10日 (1971-12-10)
  • さよならアメリカ さよならニッポン/無風状態(1973年2月25日 (1973-02-25)
  • あしたてんきになあれ(1999年11月26日 (1999-11-26)
  • アルバム
    オリジナル
    • はっぴいえんど(1970年8月5日 (1970-08-05)
    • 風街ろまん(1971年11月20日 (1971-11-20)
    • HAPPY END(1973年2月25日 (1973-02-25)
    ライブ
    ベスト
    • CITY(1973年9月1日 (1973-09-01)
    • SINGLES(1974年6月25日 (1974-06-25)
    ボックス
    • はっぴいえんど〜HAPPY END(1993年5月25日 (1993-05-25)
    • はっぴいえんどBOX(2004年3月31日 (2004-03-31)
    • はっぴいえんどマスターピース(2014年12月26日 (2014-12-26)
    その他
    楽曲
    • 風をあつめて
    参加作品
    関連項目